僕がミステリを読み始めたのは19才くらいの事だったと思う。
高校を卒業してフラフラしていたのだが、ただフラフラしていても良くないんじゃないかという不安みたいなものもあり読書をすることにした。
”暇すぎてアホになりそうだから読書”というのは短絡的であるが、読書習慣を身につけられたと思えば無駄ではなかった。
はじめは軽めのやつが良いだろうということで、哲学書や経済書より気軽に読めそうなミステリを物色した(ミステリ好きの人には申し訳ない)
当然、近所のブックオフの100円コーナーにいったわけですが、ここで一発目に綾辻行人の「十角館の殺人」を選ぶあたりに自分の引きの強さを感じた。
まぁ十角館の殺人が名作だと知ったのはだいぶ後からで、綾辻行人の本を手にとったのもあ行の棚から見ていっただけなんだけども……
殊能作品との出会い
で、ミステリにハマって法月綸太郎だの歌野晶午だの折原一だのその他だのを読んで、殊能センセーに行き当たったのである。
当時、ミステリを読みすぎて食傷気味だったところに、殊能将之の作品。
この頃は殊能将之と麻耶雄嵩がお気に入りだったように思う。
とくに殊能将之にハマった。しかし殊能センセーはある時を境に作品を発表しなくなる。
まだかなぁまだかなぁと思っていたら突然の訃報。
「あー もうこの先は本でないんだなぁ」と思ったのを覚えている。
死後も殊能センセーがサイトで書いていた読書記録をまとめた本(殊能将之 読書日記 2000-2009 The Reading Diary of Mercy Snow)などがでたが、純粋な作品というものは出ていなかった。
そんな中、講談社編集部で原稿整理をしていると未発表の短編が3つほど見つかったということで、今回の出版ということになったらしい。
田波正から殊能将之
今回の未発表作は「殊能将之」としてデビューする前に書いていたものらしい。
ようするに「田波正」の時期に書いた習作ということらしい。
確かにデビュー後の作風とはちょっと違う(ミステリじゃないし)けど殊能節というかエッセンスのようなものはある。
田波正は高校時代からSF界隈では”福井の天才”と呼ばれていたらしいので、その頃から文章・文体は完成されていたのかもしれない。
らしい、とか、かもしれないが多いのは僕があまり作者のパーソナルなことは気にならないことが多いからです。
内容
- 犬がこわい
- 鬼ごっこ
- 精霊もどし
- ハサミ男の秘密の日記
の4編で構成されている。ハサミ男の秘密の日記だけは小説ではなく友人の磯達雄氏に宛てた手紙のようなもの。
短時間で一気に読めてしまう。最後には友人の大森望氏の解説付き。
殊能将之ファンでなくても読んで面白いか?
今回の短編集は完全にファン向けだと思います。
しかし、ファンでなくとも楽しむ方法はあります。
最初にほかの殊能作品を読んでファンに成ってしまえば良いのです。そうすればコチラを読んで楽しめるでしょう。
逆に言えばファンは即買いでいいでしょう。
僕はファンのくせに今さら(出版後7ヶ月たってる)読んでいるわけですが……
情報収集を怠った結果です。